FC2ブログ

がん薬物療法に伴って生じる QT 延長症候群についてのレビュー

A current understanding of drug-inducedQT prolongation and its implications for anticancer therapy
(Roden DM. Cardiovascular Research (2019) 115, 895-903)

Cardiovascular Research 誌の 2019 年 4 月号(vol 115, issue 5)にて、Cardio-Oncology が特集されている。

Cardiovascular Research Volume 115, Issue 5, 15 April 2019

免疫チェックポイント阻害薬投与に伴う心筋炎、ホルモン療法に関連する不整脈など、かなり意欲的な話題についてのレビューが掲載されている。
中でも、個人的に気になったのが本論分、がん治療に伴う QT 延長についてどう考えればいかについてのレビュー。

現在、多くのがん薬物療法の臨床試験に際しては、心電図における QT 間隔の評価について、時に慎重すぎるとも思われるレベルで慎重に評価されていることが多く、それ故 QT 延長に関連して重篤なイベントに遭遇する機会というのは多くないと思われる。
しかし、それゆえに、本レビューの Figure 1 に示されているような事態が、現に起こりうるということを目の当たりにし、共有しておけることはありがたい。
レビューはリスク評価・対策から進み、最後に作用機序に関するという構成になっており、臨床現場での対応について知りたいという立場からは、こうした順序での記載は読みやすいみのと感じる。

本邦でもがん診療と循環器領域の相互理解を深める機会は徐々に増えており、がん診療に携わる側からも、こうした情報提供の機会を活かして理解を深められるようにしておきたい。

実践 Onco-Cardiology がん臨床医と循環器医のための新しいテキスト(中外医学社)以前にも紹介したトピックである、がん患者の心疾患に関する本。がん患者の心臓を守る!腫瘍循環器学 Q&A (文光堂)がん治療の進歩とともに患者予後が改善するにつれて、併存する疾患や有害事象に伴う合併症の予防や対策についての重要性が高まっている。それに伴い、これまでがん診療とは関わりの薄かった領域についての体系的なまとめが、和書で...
実践 Onco-Cardiology がん臨床医と循環器医のための新しいテキスト(中外医学社)

がん患者の心臓を守る!腫瘍循環器学 Q&A (文光堂)がん治療の進歩とともに患者予後が改善するにつれて、併存する疾患や有害事象に伴う合併症の予防や対策についての重要性が高まっている。それに伴い、これまでがん診療とは関わりの薄かった領域についての体系的なまとめが、和書でも徐々に出版されるようになっている。オンコネフロロジー がんと腎臓病学・腎疾患と腫瘍学(監訳:和田健彦、訳:井上美貴、MEDSi)がん診療にお...
がん患者の心臓を守る!腫瘍循環器学 Q&A (文光堂)

スポンサーサイト

AYA がん患者における就労・金銭の問題

Lasting Effects of Cancer and Its Treatment on Employment and Finances in Adolescent and Young Adult Cancer Survivors
(Ketterl TG et al. Cancer 2019;125:1908-1917)

米国では、かねてよりがん治療に伴う経済的問題が "financial toxicity" として可視化され、その問題がいわゆる働き盛りの年齢でより大きいことは過去にも報告されている。

Financial Hardship Associated With Cancer in the United States: Findings From a Population-Based Sample of Adult Cancer Survivors(Yabroff KR et al. J Clin Oncol 34:259-267, 2016)がん診療、とりわけ薬物療法のコストが増大するにつれ、国家経済にもたらすコストの問題が表面化し、論文としても公表されるように
米国でがん患者が直面している経済的困難に関する調査

今回の論文では、更に若年層に的を絞り、AYA 世代のがん患者の、「がん治療後も続く」経済的問題、就労問題が取り上げられている。
最も、Table 1 に挙げられている患者背景を見直すと、およそ 80% が白人であり、その辺りの分布は勘案しておく必要がある。

乳がん患者における化学療法を受けることに伴う仕事への精神的影響、就労時間への影響など、定性的には当たり前の情報だが、こうした課題をいかに解決すべき問題として可視化するかというのは、本邦においてもますます重要視されていく問題意識であろう。

Nivolumab 4 週間毎投与の根拠となる PK/PD シミュレーション

Model-informed drug development approach supporting approval of the 4-week (Q4W) dosing schedule for nivolumab (Opdivo) across multiple indications: a regulatory perspective
(Bi Y et al. Annals of Oncology 30: 644–651, 2019)

抗 PD-1 抗体 Nivolumab について、本邦でも 2018 年より投与量が 240 mg/body 2 週間毎の固定用量で承認された。その際の投与量設定のシミュレーションは論文化もされている。

Assessment of nivolumab benefit–risk profile of a 240-mg flat dose relative to a 3-mg/kg dosing regimen in patients with advanced tumors(Zhao x et al. Annals of Oncology 28: 2002–2008, 2017)米国 FDA では、2016 年 9 月より Nivolumab 単剤使用時の承認用量が一部のがん
固形腫瘍に対する Nivolumab の投与量シミュレーション: 3 mg/kg vs 240 mg/body

しかし、米国 FDA では更にその先を行き、2018 年から 480 mg/body 4 週間毎投与が承認されている。

FDA Approves sBLA Updating Nivolumab Dosing Schedule Across Indications (ASCO post)

この用量変更にあたっても中心となったのが、上述した固定用量(240 mg/body)の時と同じく用量のシミュレーションということで、今回もそのシミュレーションについての解説が論文化された。驚きなのは、今回の論文のタイトルに "a regulatory perspective" とある通り、著者は FDA 所属なのである。前回の 240 mg/body の論文では、開発元(製薬会社)のスタッフが著者であったのだが、本論文では開発元は(funding にも)含まれていない。

それ故、こうした形でデータが発表されることは、単に説明されている用量が PK/PD シミュレーションとして適切かどうかというだけでなく、FDA のその結果に対する姿勢、解釈を提示することでもあり、実際のデータ以上に大きな意味を持っている論文といえる。

がん治療エッセンシャルガイド What's New In Oncology 第 4 版(南山堂)

がん治療エッセンシャルガイド What's New In Oncology 第 4 版(南山堂)

「新臨床腫瘍学」と並び、日本語のがん診療の網羅的な教科書の定番である本書。

新臨床腫瘍学 改訂第 5 版 (南江堂)3 年毎に改訂を繰り返している臨床腫瘍学会から出版の教科書も、今回で第 5 版。これまでの版と同様、JSMO で先行販売となった。新臨床腫瘍学 改訂第4版 (南江堂)日本臨床腫瘍学会の指定教科書。前版からきっちり3年で改訂、2015 年の臨床腫瘍学会学術集会では先行販売と称して大々的に売り出されていた。新臨床腫瘍学―がん薬物療法専門医のために(2012/12)日本臨床腫瘍学会商品詳細を見る...
新臨床腫瘍学 改訂第 5 版 (南江堂)

前版が 2015 年刊であったから、4 年ぶりの改訂となる。
今回の版より、総論部分がすべて電子版に移行し、紙書籍部分は各論のみという形で大幅に体裁が変更されている。出版社 HP などの予告でその情報は得ていたものの、いざ書店で探してみると、棚挿しだったこともあり、これまでの印象と大きく異なる薄さのため、発見に苦労した。

先に挙げた「新臨床腫瘍学」と比べると、本シリーズは各領域における薬物療法の治療の詳細や成績について具体的に掲載する方針が取られており、実臨床における考え方を身に着ける上では、各領域について通しで読むことが役に立つ。
また、比較的臨床的に判断に悩むトピックについて、具体的に考え方を説明している部分が多いところもポイント。
今回の版で言えば、乳がんに対する補助療法としてのホルモン療法の至適期間などは限られた紙面でありながら、かなり丁寧に説明されており、ガイドラインよりもすっきりまとまっているため、先にこちらを読んでからガイドラインに進んだ方が理解が進みそうというレベル。

乳癌診療ガイドライン1 治療編 2018年版 第4版 (金原出版)これまで 2 年ごとに出版されてきた「乳癌診療ガイドライン」の 2018 年度版。前版が 2015 年版なので、通常より 1 年遅れたことになるが、その経緯については、Minds 診療ガイドラインの改定を踏まえ GRADE (Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation) システムを導入するための大幅な改訂があったためであることが序文に記されている。① 治
乳癌診療ガイドライン 2018 年版(金原出版)

一方で、大腸がんにおける補助化学療法の投与期間(3 カ月 vs 6 カ月)や、原発部位が薬物治療の選択に及ぼす影響(右結腸 vs 左結腸)などは、もう少し詳しく議論してほしかったと感じた。
肺がんにおける免疫チェックポイント阻害薬を用いる際の治療選択(特に、PD-L1 発現度に基づく単剤 or 化学療法併用の選択)についての考え方についても、もう少し整理の余地はあると感じるが、これはエビデンスが出揃ってきたのが 2018 年いっぱいにかけてのことなので、出版時期との関係からすると致し方なしか。

後、個人的にはどうしても気になるのは骨軟部腫瘍の項目における横紋筋肉腫の説明。本文でシクロホスファミドの用量について、1.2~1.5 mg/m2 を至適投与量と記載しているけれども、そこに至るまでの議論が雑で容認できない(根拠に挙げている出典が 1995 年のもので、その後に実施された臨床試験の説明とちぐはくな上に、表で挙げているレジメンでは原著通りにシクロホスファミドの用量が 2,2 g/m2 と設定されている、など)。

後は、神経内分泌腫瘍に対する 177Lu-Dotatate についてなど、国内未承認の治療については言及がないものもあるが、そこは本書の役割からしたら必ずしも欠陥とは言えない。

Therapeutic Options for Neuroendocrine Tumors: A Systematic Review and Network Meta-analysis(Kaderli RM et al. JAMA Oncol. 2019; 5(4): 480-489)神経内分泌腫瘍に対する現時点での治療薬についてのメタアナリシス。本疾患に関しては、病理学的悪性度が低い場合には進行がゆっくりなことも多く、また症候性であるか否かも大きく治療選択に寄与するだけに
神経内分泌腫瘍(NET)への治療メタアナリシス

全領域を網羅するために、取り敢えず、というつもりで手元に置いておいて損はない一冊。

抗 PD-1 抗体 Pembrolizumab により治療された患者の長期経過: Keynote-001

Five-year survival outcomes for patients with advanced melanoma treated with pembrolizumab in KEYNOTE-001
(Hamid O et al. Annals of Oncology 30: 582–588, 2019)

抗 PD-1 抗体の臨床試験の中でも、その原点としての位置づけと、第Ⅰ相でありながら参加患者数が 1,000 名を超える異様な規模から一際存在感の大きい Keynote-001 試験については、これまでも触れた。

Previous radiotherapy and the clinical activity and toxicity of pembrolizumab in the treatment of non-small-cell lung cancer: a secondary analysis of the KEYNOTE-001 phase 1 trial(Shaverdian N et al. Lancet Oncol 2017; 18: 895&
放射線治療歴の有無による非小細胞肺がんへの抗 PD-1 抗体 Pembrolizumab の効果の違い: KEYNOTE-001 サブ解析

今回、いち早く抗 PD-1 抗体を含む免疫チェックポイント阻害薬の有効性が見いだされた悪性黒色腫について、5 年以上の長期フォローアップ期間をもってその経過を報告したのが本論文。

そこで得られた 5 年生存率 34% という見積もりは、これだけ免疫チェックポイント阻害薬が当たり前の治療として浸透した現在では物足りなく見えるかもしれないが、これらの薬剤が登場した際の第Ⅲ相試験における対照群である Dacarbazine 群では、1 年生存率が 40% 程度であったことを思えば、ものの 10 年しないうちでのこの変化には隔世の感がある。

Nivolumab in Previously Untreated Melanoma without BRAF Mutation(Robert C et al. N Engl J Med 2015;372:320-30)抗 PD-1 抗体薬 Nivolumab については、これまでも散々取り上げてきた。単独での治療効果のみならず、効果予測因子や併用療法の可能性まで検討され、既に思いつく限りのデザインの試験は一通り試みられている感がある。Safety and activity
BRAF 変異のない未治療悪性黒色腫への Nivolumab の効果を評価する第Ⅲ相試験

Figure 1 の生存曲線を見ると、1 年しないところでの打ち切り例もいくらか見受けられており、実際の臨床上の数値としてはもう少し推定される生存率は低いことが予想されるが、それでも 60 カ月 = 5 年に届き、超えて生存している症例が多数認められるところは頼もしい。本試験が第Ⅰ相であるということを忘れそうになる結果である。
プロフィール

Kenji.N

Author:Kenji.N
2014年4月よりがん薬物療法専門医を標榜しております。現在、主に診療している領域は、頭頚部腫瘍、軟部肉腫、泌尿器腫瘍、悪性皮膚腫瘍、原発不明癌、など。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
カウンター